1978年、ボブマーリーはコンサートでジャマイカの2大政党の党首を握手させた

1978年、ボブマーリーはコンサートでジャマイカの2大政党の党首を握手させた

「今までボブマーリー&ウェイラーズの曲に興味がなかった人も、ラスタに無関心な人も、”3羽の小鳥 Three Little Birds” や “ウェイティングインヴェイン Waiting in Vain” なら理解してもらえる。そして好きになってくれる

ボブマーリー

ボブマーリー自身がコメントしているように「3羽の小鳥 Three Little Birds」は現在でも世界中で聴かれ、そして、歌われている名曲で、YouTubeではオフィシャルなもの、準オフィシャルなものなど、4種類のバージョンを聴くことができるが、その合計再生回数は約3億回という膨大なものだ。

日本人、特にボブマーリーを始めて聴くような方に一番おすすめなのは、アニメとともに、日本語(だけでなく各国語)の訳詞がつけられた、この動画だ。

この曲が、ボブマーリーの楽曲としては、政治的でもなく、宗教的(ラスタ的)でもなく、わかりやすく、覚えやすく、誰が聴いても親しみが持てる名曲であることは3億回の再生回数で証明されている。

ビートルズの中で一番多くの人から支持されているのがポールマッカートニーである理由は、政治や宗教との関わりが全くなく、シンプルで親しみやすいメロディと歌詞を生み続けているからだろう。この「3羽の小鳥 Three Little Birds」はボブマーリーの楽曲の中で最もポールマッカートニー的と言えるのではないか。

もうひとつ、ボブマーリーのコメントで言及されている「ウェイティングインヴェイン Waiting in Vain」のオフィシャル動画もYouTubeでの再生回数が6000万回を超えている名曲中の名曲だ。

この曲は、タイトルから簡単に想像できないが “Love” をテーマにした楽曲だ。
しかし、決して甘口のラブソングではない。

“Love” をテーマにした楽曲は、いわゆる「ラブソング」を含め、ポピュラー音楽においては無数にあり、これからも増え続けていくだろう。そして、この系統の楽曲に強いのはポールマッカートニーで、代表曲の “My Love” は、およそ1億回も再生されている。

しかし、ボブマーリーの “Love” 系の楽曲には、ポールの “My Love” の再生回数を超える曲がある。
それは「One Love」だ。
この曲はなんと2億回も再生されている。

なぜボブマーリーは、これほど世界中の人の心をとらえることができたのだろうか?

楽曲が素晴らしいことはいうまでもないが、あえて、いくつかのポイントをあげると「人種の壁がない」「宗教の壁がない」「政治の壁がない」「レゲエの壁がない」といった点ではないだろうか。

まず、人種的な観点で言えば、ボブは白人の父とジャマイカ人の母の子として生まれていて、今の言葉でいえば「多様性」の申し子だった。

宗教に関しては、もちろん「ラスタ」なのだが、これも世界的に見たらマジョリティであるキリスト教やイスラム教とは違う新しい宗教であって、彼の人気を後押しするようなことはない。

政治的には、1960~1970年代の頃にありがちだった「資本主義」と「共産主義」の対立とも違う、「第三世界 Third World」の政治観であり、どちらにも属さないことを貫いた。

その最たる成果が1978年のジャマイカの1978年の伝説のコンサートだ。
ボブマーリーは、当時のジャマイカで激しく対立する、保守系政党と社会主義系政党の、2大政党の党首をステージに招き「握手させる」ことに成功した。

ボブマーリーは、今でもレゲエという音楽ジャンルの頂点に位置付けられる。
しかし、ボブマーリーのような音楽を期待してジャマイカの他のレゲエアーティストを聴いてみると、驚くほどボブマーリーと違うことに気づくだろう。

実はレゲエという音楽には、「ダンスホール」「ラバーズ」「ダブ」など様々な流派があり、ボブマーリーの音楽に近いのは、強いていえば、基本にして伝統的な「ルーツレゲエ」だろう。
しかし、「ルーツレゲエ」を聴けば聴くほど、ボブマーリーの音楽が別次元の異質なものだと気づくことになる。

ボブマーリーは人種、宗教、政治、そしてレゲエの壁をも超越した存在だったのだ。

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