1964年、ビートルズとボブディランが出会い、ロックが音楽の頂点に到達した

1964年、ビートルズとボブディランが出会い、ロックが音楽の頂点に到達した

「ジョンレノンとポールマッカートニーは素晴らしいシンガーだった。いまだに、彼らに勝るシンガーを探すのは難しい。」

ボブディラン

実にシンプルな言い方だが、これほど端的にビートルズの特徴を表現する文章があるだろうか?
これが凡人の言葉でなく、歴史に残る音楽家ボブディランの言葉だから説得力が違う。
ビートルズの最大の特徴は、ジョンレノンとポールマッカートニーという2人の天才シンガーが同じバンドで歌っていることだ。しかも、この2人は偉大な20世紀の作曲家でもある。

1963年にイギリスで、「プリーズ・プリーズ・ミー」「フロム・ミー・トゥ・ユー」「シー・ラヴズ・ユー」と、立て続けにヒットチャート1位の曲を連発したビートルズ。
1964年にはアメリカでもシングル「抱きしめたい」でヒットチャートの1位を獲得し、アメリカツアーを行い、世界的なスターの座に登りつめた。

この1964年に、ビートルズはアメリカで、カリスマ「フォーク」シンガーだったボブディランと会った。ビートルズはディランのアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」を愛聴していて、一方のディランはビートルズの「抱きしめたい」を聴いていて、「彼らが使ったコードはとてもユニークだし、誰もやったことがないことをやっている。さらにコーラスがそれを引き立てている」とブレーク前のビートルズを絶賛していた。
ビートルズはロックンロール、ディランはフォーク、とジャンルこそ違うものの、共通点は自分たちで曲を作り歌うことで、それ以前のレコード会社による職業作曲家・職業作詞家・職業演奏家の分業体制での音楽制作方式を過去のものに追いやったのだ。

そしてビートルズとボブディランの出会いはお互いの音楽を変えた。
その変化によって世界の音楽も変わった。

1964年以前のビートルズの代表曲といえば、この曲「She Loves You」だ。

1964年以後のビートルズはこのように変化する。

一方のディランの音楽の変化も激しい。1964年以前のディランの「フォーク」スタイルの一曲がこれだ。

1964年以後はこのように「ロック」的なスタイルへと変貌する。

もともとディランは、当時のアメリカの世相を反映し、戦争によって世界最強の国となったアメリカが抱える問題に対してプロテストソング(抗議の歌)を歌って、問題提起をするフォークシンガーだった。その基本スタイルは、ギターと歌だけという極めてシンプルなもので、当時のアメリカが関わった戦争や、抱えていた社会問題を歌に織り込み、大学生などの若者たちから熱狂的に支持されていた。

この当時の「フォーク」という音楽は、戦後のアメリカの商業的な音楽への対抗軸でもあり、黎明期のロックスターだったエルヴィスプレスリーのようなものを受け入れなかった。しかし、皮肉なことに、そのエルヴィスプレスリーに多大な影響を受けたビートルズの音楽をボブディランが取り入れたのだ。

この時期を境にボブディランの「脱フォーク」が進み、ロック的なサウンドに取り入れることで、さらに多くのファンを世界的に拡げていくことになる。

一方で、ビートルズは、ボブディランから、音楽と歌詞によって表現できる思想や人生観を取り入れ、深みのある音楽へと進化していった。

そして、単なる娯楽的な音楽だったロックが、人生や世界を変える本物の音楽へと進化した。

その起点は1964年だった。

Rockカテゴリの最新記事