1969年、レッドツェッペリンの歪んだギターの音に世界が歓喜した

1969年、レッドツェッペリンの歪んだギターの音に世界が歓喜した

「ジョン・ボーナムの演奏を聴くやいなや、このバンドが偉大になるとわかった。僕たちは、すぐにチームとしてともにロックした」
ジョン・ポール・ジョーンズ

レッドツェッペリンといえば、バンドの顔としてボーカルのロバートプラントとギターのジミーペイジが脚光を浴びる存在だ。この2人にはロックに求められるきらびやかなビジュアルと圧倒的な実力がある。しかし、このバンドと他のバンドと一線を画しているのは、むしろジョンボーナムのドラムであろう。

レッドツェッペリンの結成前に複数のドラマー候補がいたが「ライブハウスの外まで大音量のドラムの音が聞こえてきて彼しか考えられないと思った」とジミーペイジが語っていたように圧倒的なパワー、そしてテクニックと独特のグルーブをあわせ持つのがジョンボーナムだ。

このパワフルでタイトなドラムがサウンドの中心となって、ディストーション(歪み)のかかったエレキギターと高音でシャウトするボーカルが組み合わさり「ハードロック」というフォーマットが完成の域に達した。レッドツェッペリンと同じ1968年に結成されたディープパープルもハードロックの雄だが、結成当時はあまりハードロック的でなかった。これに対し、レッドツェッペリンは12年の活動を通して最初から最後まで同じメンバーでブレずに一貫した「ハードロック」のサウンドを貫き通したことが何よりも特徴的だ。

60年代の音楽界は、シングルレコードで「ヒット曲」を作りアルバムのセールスにつなげるのが当たり前だったが、レッドツェッペリンはその「シングル優先」を真っ向から否定したバンドだった。例えば代表曲のひとつ「天国への階段」の演奏時間が8分で、シングルレコードに収まらない。その他の曲も4分30秒というシングルレコードの規格には収まらないものが多い。
彼らの意向もあり、本国イギリスでは2枚のシングルレコードしか発売されなかった。
その貴重な1枚が彼らの代表曲「胸いっぱいの愛を」だ。

イギリスでは発売後に回収されることになったこのシングルレコードはアメリカ、ドイツ、オランダ、 ベルギー、フランス、日本で発売され、アメリカでは最高4位、世界で100万枚を売り上げ大ヒットとなった。

印象的で耳に残るジミーペイジのギターリフ、ロバートプラントのハイトーンの声、そしてジョンボーナムの力強くグルーブするドラム。これぞレッドツェッペリンというサウンドである。

そして、このような歪んだギターを中心とするハードなスタイルで、シングルレコードがこれだけ売れたのは画期的なことであり、同様のバンドが多数生まれ、「ハードロック」は一大ジャンルとなった。この流れは後に「ヘビーメタル」となり、さらに「スラッシュメタル」や「デスメタル」などの派生形が生まれていくことになる。

レッドツェッペリン以前にもビートルズの「へルタースケルター」のような「ハードロック」的な楽曲は存在した。また、歪んだギターのロックであれば、60年代後半にジミヘンドリックスがスターとして存在していた。では、ジミーペイジでさえ尊敬しているジミヘンドリックスとレッドツェッペリンの違いは何か?それはジミーペイジが無数の「ギター小僧」を生み出し、ジョンボーナムが無数の「ドラム小僧」を生み出したことだ。ジミヘンドリックスの演奏とパフォーマンスは神がかりすぎていて、ギター小僧たちが最初に手をだしにくい。
その曲の長さからラジオで曲がかかることが少なかった(むしろメディアを敵にまわしていた)レッドツェッペリンが、ハードロックというジャンルを切り開き、多くの人を引き寄せたのは、「先生」としての優秀さと影響力もあったのである。

Rockカテゴリの最新記事